食道がんは、食道の粘膜上皮や粘液腺上皮から生じる悪性の腫瘍で男女比は約6:1で男性に多く、60歳以上の者にみられることが多いと言われています。
しかし、原因は明らかでなく、アルコールや喫煙、熱い食べ物などが危険因子と考えられています。
早期がんでは無症状、あるいは嚥下時にしみる程度の場合が多く、進行するにしたがって嚥下困難や嚥下時痛、胸やけ、嗄声、嘔吐、心窩部痛などの症状が現れるのです。
食道がんは放置すれば1~2年で死に至りますが、早期から適切に治療を行えば60~70%の人が完治すると言われています。
私たちの体内では、実は健康な人であっても毎日5,000個くらいの「がん細胞」が作られてしまっているのです。
これは細胞再生の際におけるDNAのコピーミスなどによるもので、それらのほとんどは免疫機構により日々排除されています。しかし加齢やストレスなどにより免疫力が弱くなると、それらの「がん細胞」は増殖を繰り返し様々な部位に「がん」を発生させてしまうのです。
「がん細胞」の排除を行う主な担い手はリンパ球を中心とする白血球で、特にリンパ球に属するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)は「がん細胞」をいち早く発見し、他の免疫系の指令を必要とすることなく単独で即座に「がん細胞」を殺傷します。NK細胞は別名「生まれながらの殺し屋」とも呼ばれ、他の免疫細胞の攻撃を免れた「がん細胞」をも攻撃するのです。
そして、その後「がん細胞」を貪食した樹状細胞やマクロファージからの指令を受けたヘルパーT細胞やキラーT細胞などがNK細胞に追随する形で「がん細胞」を攻撃することとなります。
最新の研究で鍼灸治療は、NK細胞・T細胞などのリンパ球を増加させ、それらの血液中への移行を促進する作用を示すとともに、その活性化を強く促すことが証明されています。
さらに、鍼灸治療はストレスなどによる免疫抑制に対する防止効果を有するため、免疫系を調節することにより「がん」の発生を抑止し、またその増殖を抑制することが可能となるのです。
それゆえ鍼灸治療は「食道がん」の症状である嚥下時痛や心窩部痛などの癌性疼痛に対し、鍼灸治療の持つ鎮痛作用により、がんの痛みを緩和するとともに、胃の運動機能調整作用により吐き気や嘔吐の症状を軽減します。