『東洋医学』を知ろう!

移りゆく季節の中で …

一年を通して私たちの生活は季節とともにあると言っても過言ではないでしょう。

確かに最近は地球温暖化の影響でしょうか? 季節感が減ってきているとはいえ、やはり冬は寒く夏は暑いのが通常です。

『東洋医学』では、この季節の変化による気候の特徴を「六気」と呼び、風・暑・湿・火・燥・寒、の6種類に分類しています。

温かくなり始める春には、春一番など風が起こります。そして夏に近づくにつれ暑くなり始め、じめじめとした湿気の多い長雨の時期がようやく終わると最近は火のそばに居るほどに感じる真夏を迎えます。でも、いつしか季節は巡り、ふと気が付くと涼しさを含んだ乾燥した秋の空気にいつの間にか変わっています。そして、そうこうしているうちに季節はもうすでに寒い冬 … 。

こうして私たちは、移ろいゆく季節の中で自然の変化と日々向き合いながら、その季節に応じた暮らしを送っているのです。

しかし、あまりにも夏が暑過ぎたり、冬の寒さが極端であると、私たちは体調を崩してしまいます。また自身の体力が弱っていたり、梅雨や春霖・秋霖など、細菌やウイルスが増殖しやすい湿度の高い日などが続くとそれもまた身体に具合の悪さを生んでしまいます。

つまりその時、それぞれの六気は邪悪な「六淫」として作用し、風邪・暑邪・湿邪・火邪・燥邪・寒邪となってしまっているのです。

《風邪》 … 開泄・動の性質人体に侵入すると上部に症状が現れることが多く、頭痛・鼻づまり・咽頭痛を引き起こすとともに発熱・発汗など急に早い経過で症状が進んでしまいます。

《暑邪》 … 炎熱・昇散の性質暑が夏の主気であるため、その症状は盛夏だけにみられ、高熱・顔面紅潮・大量発汗・口渇などの症状とともに悪心嘔吐・下痢・脱力感を伴うこともあります。

《湿邪》 … 重濁・粘滞の性質人体に侵入すると身体や手足が重だるくなり、それが関節に停滞すると動作が障害され重く痛みます。また大小便も切れが悪くなったり濁ったりしてしまいます。

《火邪》 … 炎上・蒸発の性質火は、暑の亢進したものであり、高熱・顔面紅潮・大量発汗など暑邪の症状に加え、意識障害や歯茎の腫れ・口舌のびらん・鼻血・血便・吐血などの異常出血も起こってきます。

《燥邪》 … 乾燥・渋の性質人体に侵入すると津液を消耗させるため、鼻や口・喉が渇き肺を損傷させやすく、また皮膚や髪の毛がかさついて亀裂を生じるとともに大便は固く出にくくなってしまいます。

《寒邪》 … 凝滞・収引の性質気血の流れを滞らせ、筋肉や皮膚を収縮させてしまい腹部や全身の冷え、手足や身体のかじかみ・痛み・下痢・無汗などの症状を引き起こしてしまいます。

いかがですか皆さん。本来、普通にある季節の気候変化の幅が少し大き過ぎるだけで自然の中の正常な「気」が恐ろしい「邪気」へと姿を変えてしまうのがお分かりいただけたのではないでしょうか。

もしかすると近年、世界中で起こっている様々な異常気象も人間の身勝手な振舞いに怒った大自然が人類を滅ぼそうとしているのかもしれませんね。

今のこの時代を如実に表現する言葉として誰もが一番に思い描くのは悲しいことですが「ストレス」という言葉ではないでしょうか。

若者、中年、老人ともに増え続ける自殺者。孤独・貧困・絶望行き先の見えない未来に戸惑い懊悩する多くの人々。

今、この社会の中に蔓延る最大の病因は、細菌やウイルスではなくこのストレスなのかもしれません。

『東洋医学』では、病気の内なる原因を内因と呼び「七情」という7つの精神素因に分類しました。

そしてその行き過ぎた感情や精神状態が臓腑気血に影響を与え病気を発症させると考えたのです。

怒り・憂い・悲しみ・恐れ・驚き、そして思いや喜びでさえもまた過ぎれば心身機能を失調させる病因の1つとなってしまうのです。

しかし、日常におけるこれらの感情は外界の事柄に対応するための精神の正常な反応であり、普通に社会生活を送っている場合においては特に変調を起こさせる素因となるものではありません。

時にそれらは人生に厚みを与えるとともに、心にメリハリや彩りを添えるものでもあり、私たちの豊かな思惟活動の源泉でもあると言えるのです。

つまりそれら「七情」が病因となるのは強烈で急激な精神に対する衝撃があった場合や持続的な精神刺激が加わったときであり、私たちは、そのストレスにより心身症を引き起こしてしまうのです。そしてそれら7つの感情は決まった臓器を障害します。

怒り過ぎると「肝」を障害し、血が頭部に急激に上昇することにより卒倒して意識不明となりショック状態になることがあります。

憂いや悲しみは「肺」を障害し、気が滅入り、意気消沈することにより溜め息ばかりが出て、やがて咳が現れます。

恐れや驚きは「腎」を障害し、大小便の失禁が起こったり、精神が不安定になり、ひどい場合には精神が錯乱してしまいます。

思い過ぎると精神が疲労し「脾」を障害して食欲がなくなったり、動悸・健忘・不眠・多夢などが現れます。

喜び過ぎると気が緩み「心」を障害し、集中力の低下や不眠を生じ激しい場合には失神・狂乱におちいります。

このように私たちが持つ様々な感情は、時として私たち自身を深く傷つけ心の内側から心身を蝕み、命をすり減らしてしまうのです。

今という時代、そしてこの社会をすぐに変えることは出来ません。

でも私たち一人一人が強く正しい心を持ち続け、その間違えた異常な世界に、力を合わせて立ち向かったならば、未来はきっと変えることが出来るはずです。そう、今を生きる私たちは繋ぎゆく子供たちに何かを残してやらなければならないのです。私たち人間がどう在るべきかを考える時、それが今という時代なのかもしれません。

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