『東洋医学』を知ろう!

招かれざる客

『東洋医学』の臨床おいては患者さんを診察して診断を下すことを「証をたてる」と表現します。

ですから証は、その字が示す通り「あかし」であり、心身の状態を証明する病名(診断名)とイコールのものと捉えてください。

そして証は、原因と症状を表す「本証」と「標証」、また一次・二次を意味する「主証」と「客証」に分類されます。

風邪をひくと咳や鼻水・発熱などに悩まされますよね。また虫歯になり、歯が痛んだり歯茎が腫れたりした経験は誰にでもあると思います。

この場合において風邪や虫歯は「本証」すなわち根本の原因であり、咳や発熱、また痛みや腫れなどは、その根本原因により引き起こされた症状で、「標証」つまり根に対し、枝葉であると考えるのです。

それと同様に、膝関節の炎症があり、その痛みで歩き方が変であったために腰痛が生じた場合においては、膝関節炎が主になる疾患、すなわち「主証」であり、腰痛はそれにより後から二次的に引き起こされた疾患であるため「客証」と表現されるのです。

もちろん治療は、根本原因である「本証」を治すこと(根治療法)が最大の目的ですが、あまりにも「標証」の苦痛が激しい場合には、その症状を先に治療すること(対症療法)も大切です。

また「主証」「客証」も同じく、それぞれの状態に応じて、同時に治療をしていく必要のある場合もあるのです。

でも、適切な正しい治療をするためには、まず証をきちんとたてなくてはいけません。

では証は、どのようにしてたてられるのでしょうか?

次は、その診察・診断の方法を詳しく見て参るといたしましょう。

《東洋医学の診察法》
『東洋医学』における診察は「四診」によっておこなわれます。

四診とは「望診」「聞診」「切診」「問診」の4つの診察法をさし現代医学で言うところの、視診・聴診・触診・問診に当たります。

「望診」は、患者の身体を目で見て診察する方法です。体形・姿勢・動作、そして顔色や表情・目つき、また肌や爪・舌の状態などをしっかりと観察し、疾病の性質や予後を見極めます。

「聞診」は、発声・呼吸・腹部の音などを耳で聞く、聴覚を使って診察するものと、口臭・体臭・大小便などの匂いを嗅ぐ、嗅覚を使って診察する方法を合わせた診察法です。

「切診」は、手指や手掌で直接患者の身体に触れて診察する方法で脈やお腹の張り、皮膚の状態や冷え・熱感などをチェックします。

「問診」は、患者に問い掛けて、主訴・現病歴・既往歴・社会歴・家族歴などを訊ねるとともに、食欲や睡眠・大小便・月経など患者の状態およびその置かれている環境にまつわる情報までをも詳しく訊き、疾患の生じた経緯をつかむ診察法です。

治療者は、これら四診により得られた情報をもとに、体質も含めた患者の症状を総合的に判断し、証をたてるのですが、それにはまだ病証がどんな性質を持ち、身体にどれくらい侵襲してきているのかを知る必要があります。

そして、その病証の状態を捉える方法が「八綱病証」と呼ばれる各疾病の持つ共通性を分析する方法です。

それは後に治療方針の決定を下す際にも重要な役割を果たすもので東洋医学の診断には欠くことが出来ません。

皆さんの体質を知るためにも用いられる八綱病証による分析。

さて、あなたはどんな病証タイプの人なのでしょう。

自身の体質パターンを見てみませんか?

《八綱病証による分類》
寒がりの人や暑がりの人、また体力のあまり無い人や旺盛な人など人それぞれ身体のタイプは大きく異なります。それは病気とまではいかなくとも何らかの病証の特徴を持つタイプであり、多くの人は少なからずとも1つ2つの体質的な偏りを有しているのです。

『東洋医学』では、異なる病証をその特徴により分類し、それらを「八綱病証」と名付けました。

そしてそれは「表裏」「寒熱」「虚実」により全ての病気が、この3組の相反する陰陽分類で分けられるというものです。

では、これら3組の病証分類が、それぞれどんな基準を持つのかを詳しく見て参りましょう。

〈表裏〉… 病位を表すもの表裏は、身体に侵入した外邪が体表部からみて、どの位置に存在しているのかという「病位」を判断するものです。表は、皮膚など身体の浅い部分をさし、疾病の初期症状とされています。また裏は、内臓など身体の最も深い部分をさし発病から一定の経過を経て現れるものとされています。

〈寒熱〉… 病情を表すもの寒熱は、疾病の性質、すなわち「病情」を区別するもので、寒は悪寒や手足の冷え、顔面蒼白など、自覚的・他覚的に冷感のあるもの、熱は発熱や顔の火照り、口渇など、自覚的・他覚的に熱感のあるものを表します。

〈虚実〉… 病勢を表すもの虚実は、身体へと侵入した邪気と、それに立ち向かうエネルギーである正気との戦いの情勢すなわち「病勢」をみるもので、虚は正気が不足している状態をさし、邪気に抵抗する力が弱いため、正邪の間において激しい闘争はみられず、呼吸の弱さや胃弱・下痢・頻尿などの症状が現れます。体型的には、骨肉がすんなりして、か細く体力のあまり無い人にみられる病証です。また実は自身の正気は普通だが、邪気の力が強過ぎるために正邪の闘争が激しくなった状態で、呼吸の乱れや無汗・便秘・乏尿などの症状が現れます。体型的には、骨肉ががっしりとして体力の有る人にみられる病証です。

八綱病証において、病証はまず表裏の2つに大きく分類されます。

そして表裏それぞれがまた熱と寒に分けられ4つに分類されます。

さらにそれが実と虚に分けられ「表熱実証」や「裏寒虚証」など、全部で8つの病証に分類されるのです。

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