『東洋医学』を知ろう!

『天使』と『悪魔』の棲む世界

「あなたは善い人? それとも悪い人?」あなたはこの質問にどう回答なさいますか?

私ならきっと少し考えたあと「出来るだけ善い人でいたいと思っています…」と曖昧な答えをしてしまうと思います。その理由は、恥ずかしながら普段は正しい心でいようと心掛けていても時には怒りや欲望などにより、ついつい邪悪な心が顔を見せてしまうからです。

自分の心の中で戦う「天使」と「悪魔」。

人間とは本来「善」なのか「悪」なのか?

性善説と性悪説の間で揺れる人間の本当の姿がそこに見え隠れしてしまうのです。

しかし「善」「悪」、その答えはどちらでもありません。

例えば、火や金属は人類に高い文明を築く力を与えました。コンロで魚を焼き、包丁で肉や野菜を切り様々な料理が食卓に並びます。

でもそんな便利な物たちも、ひとたび使い方やその扱い方を間違えればそれらは、火災を引き起こしたり、人を殺す道具にもなるということを、私たちは知っておかなければならないのです。

そればかりか、自然界に存在するウラン等の放射性物質に至っては完全に制御管理することが出来なければ未来永劫、二度と取り返しのつかないことにもなってしまいます。

火も、風も、水も、石も、 … 自然界を構成する万物は、「善」と「悪」その相反する2つの顔を持つとともに、人間そしてその心もまた大自然の一部としてそこに包摂されているのです。

つまり大切なのは、全てその扱い方ということですね。

そして正しい力と邪悪な力、すなわち「正気」と「邪気」の戦いの結果、邪(よこしま)なるものが勢力を持ってしまった状態を、東洋医学では主に〈外感〉つまり、外部環境が原因となった病気と捉えています。

また病気にはそれ以外に自身が原因となるものが幾つかあり、それらは〈内傷〉と呼ばれています。

『東洋医学』の解剖・生理を学んでいただいた皆さんには、ここから病気になってしまう原因、すなわち病因の数々についてご説明をさせていただこうと思います。

病因は、まず〈外感〉と〈内傷〉の2つに大きく分類されますが、それらは更に「外因」と「疫癘」および「内因」と「不内外因」に分けられます。

「外因」は、六淫とも呼ばれ季節や6種類の気候の変化などによる身体への影響をさし、「疫癘」は、コレラ・ペスト・ジフテリアなど、強力な伝染病の総称名で〈外感〉はこれら外的な要因によって引き起こされる病気の原因をいいます。

また「内因」は、七情とも呼ばれ自分の内面の感情や思いによる障害のことであり、それ以外に食べ過ぎ等々、生活の不摂生によるものが「不内外因」と呼ばれ〈内傷〉はこれら内的な要因で引き起こされる病気の原因をさしています。

その中において疫癘は、一般的にいう伝染病のことですから皆さんにも理解しやすいと思います。そしてそれは、邪気の力が強過ぎるために感染してしまうものであり、予防接種などを受けない限りなかなか防ぐのが難しいというのが実情です。

そして不内外因は、食の過不足・労働・房事(セックス)過多・外傷などによるものですから日常生活の中で自らが摂生し注意をすれば対処可能なものであると思います。

ですからここでは〈外感〉に含まれる外因すなわち「六淫」にどのような種類があるのか?

また〈内傷〉に含まれる内因としての「七情」とは一体どんな強い感情なのか?

それらを詳しく見ていくといたしましょう。

次は » 移りゆく季節の中で …

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