「人は、なぜ眠るのか?」この問いに対する答はまだ完全には解明されていませんが、睡眠中における体内の変化やそのメカニズムについては、かなり詳しくわかってきました。
もちろん人だけではなく、犬や猫・魚など、そのリズムやパターンは違っても活動と睡眠を繰り返しながら生命を維持しています。
人においては、人生の 約1/3 もの時間を占める睡眠。
きっと睡眠は私たちが生きる上においてとても重要な働きをしているに違いありません。
いったい睡眠とは、どのような役割を果たすものなのでしょうか?
私たちは起きて活動している間に色んなものを見たり、聞いたり、考えたり、また食事を味わい、運動をこなすなど、様々なことを意識的に行っています。
そしてそれら情報の処理や思考・思惟活動にまつわることは、脳が一手に引き受け、総括的に全てを担っているため脳自身はその温度がとても高く熱い状態となっているのです。
ですから私たちはフル回転している脳のオーバーヒートを防ぐため睡眠により脳をそれらから解放し休ませようとするのです。
しかし、脳は睡眠中でも休んでばかりいる訳ではありません。
起きている間に見聞きし経験した、ありとあらゆるバラバラの記憶を整理整頓するとともに、取捨選択をおこない、長期記憶へとつなげるための作業もこなしているのです。
またその際、つらい思いをしたことや嫌な気分になったことなどは極力、短期記憶だけにとどめ、捨てることの出来るものは廃棄し、心や精神が壊れてしまわないように日々メンテナンスをしているのです。
でも、簡単に忘れることが出来ない強い悲しみや驚きなど、強烈な印象が心に刻まれてしまった場合には、それが「トラウマ」となり心的外傷後ストレス障害(PTSD)や、うつ病などを引き起こしてしまうこともあるのです。
また睡眠は、自律神経系・内分泌系(ホルモン)とともに脳だけではなく、起きて活動することにより傷ついたり、壊れたりした皮膚や筋肉など、身体各部の細胞を再生・修復するとともに、低下した免疫力を回復させる働きも持っているのです。
そして、これら「脳の休息」「記憶の整理」「細胞の再生・修復」という3つの睡眠による作用は〈レム睡眠〉と〈ノンレム睡眠〉という二種類の睡眠パターンにより毎晩リズム良く行われ、私たちはその心と身体を健やかに維持し続けているのです。
それではここからはその〈レム睡眠〉と〈ノンレム睡眠〉について詳しく学んでいくといたしましょう。
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