人は寝ている間、ずっと同じ状態で睡眠をとっている訳ではありません。
個人差はありますが、約90分くらいの周期を持って「レム睡眠」と呼ばれる浅い眠りと「ノンレム睡眠」と呼ばれる深い眠りを一晩に4~5回繰り返しているのです。
レム(REM)とは、Rapid eye movement の頭文字を取ったもので「早い眼の動き」すなわち〈急速眼球運動〉と訳され、ノン(Non)は、その否定形です。
人は睡眠に入るとまず、深い眠りである「ノンレム睡眠」が始まり体温が1度くらい下がります。
これは脳が冷やされ最も休息している状態であり、思考や思惟活動が完全に停止しているとともに、夜間道路工事のように昼間の活動で傷ついた身体の修復がハイピッチで行われている時間でもあるのです。
この間、人は夢を見ず、寝返りを何度も繰り返し血液の滞留を防ぎ循環を良くしようとします。
そして一定の時間が経つと徐々に体温が上がり始め浅い眠りである「レム睡眠」へと移行していくのです。
「レム睡眠」は、寝ているにもかかわらず、脳が活発に働いている時間で、脳神経(ⅡⅢⅣⅥ)により脳と直接交通している眼球がその脳の活発な活動に影響され、目をつむったままグルグルと高速で動き回る状態となるものです。
この間、脳は昼間に見聞きし経験した様々な情報を整理し、取捨選択するとともに精神のケアも同時に行っているのです。
身体は完全に休息しているためほとんど動かず、夢をたくさん見ているのがこの時間です。
そのため、この時に何らかの理由で目が覚めてしまうと「いっ、意識があるのに体が全く動かない…」という不思議な状態になってしまうのです。
そう、これが俗に言う『金縛り』です。
睡眠は、本来このように整然とした時間的サイクルを持っているものですが、それは年齢によってある程度変化します。
小さい子供や赤ちゃんは、深く長い睡眠を必要としますが、それは「ノンレム睡眠」により身体の成長を促し「レム睡眠」によって脳の発育を促進させることが不可欠であるためです。
特に入眠後すぐの90分くらいの間は、成長ホルモンがたくさん分泌されるため、睡眠の中で最も重要な時間であると言えるでしょう。
また成長ホルモンは、赤ちゃんのみならず、身体の成長しきった大人においても分泌されるため、その時間は代謝が促進され、身体の各所が修復されていくのです。
しかしそれが歳をとり老人になるとその機能が衰える他、夜間頻尿なども現れてくるため「ノンレム睡眠」の割合が激減するとともに「レム睡眠」のリズムやサイクルも不調をきたすため、どうしても睡眠が浅く質の悪いものになってしまうのです。
そのため昼間もつい、ボーっとしてしまい、うつらうつらと居眠りをしてしまうことが多くなり、夜また浅眠になるという悪循環に陥りがちなのです。
心と身体の健康を私たちの意識しない所で守ってくれている睡眠。
叶うなら … 一生、不眠という言葉を知らず、ずっと心地よい眠りとともに夜を過ごしたいものですね。