高度に文化が発達した現代。先進国においては、交通機関・居住環境・電化製品・食品流通等々、様々な分野で快適な生活を可能とする技術や商品が充ちあふれ、私たちの「肉体」は劇的に身体的ストレスから解放されたと言っても過言ではないでしょう。
しかし、その快適な生活と引き換えに受験戦争やリストラ・失業、複雑で希薄な人間関係等々、私たちの「心」は、牧歌的な生活の中では考えられなかったような多大なる精神的ストレスにさらされ、過去十数年の間ずっと自殺者が年間3万人を越えているという悼むべき現実を社会に抱えてしまっているのです。
果たしてこれは、本当に健康な生活と言えるのでしょうか?
精神医学の分野において精神障害を引き起こす要因は、大きく次の3つに分けられます。
① 外因性精神障害
② 内因性精神障害
③ 心因性精神障害
① の外因性精神障害は、ウイルスなどによる感染や薬物または脳の外的損傷によるものがそれに当たります。
② の内因性精神障害は、神経伝達経路の異常や遺伝的要因など、脳の機能障害が原因とされています。
③ の心因性精神障害は、社会環境などが精神に影響を及ぼす心理的ストレスが原因とされています。
ここでは ③ の心因性精神障害に着目して精神的ストレスがどのような障害を引き起こすのかを代表的な疾患を学びながら見ていくといたしましょう。
【うつ病】
うつ病は、気分障害とも呼ばれ気分の落ち込みや意欲の低下などを引き起こすもので、何事にもやる気が起こらず、不眠や食欲不振・性欲減退など、様々な精神的障害が現れる疾患です。
悪化すると希死念慮(自殺願望)が強くなり自ら死を選んでしまうこともあるのです。
また、うつ病は数年~十年以上と長期に渡って患うことが多く少し状態が良くなっても繰り返し再発しやすいため、家族や友人など、周りの人の理解や気づかいがとても大切になってくるのです。
病理学的には、うつ病は脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどといった神経伝達物質の分泌異常によるものだとされています。
【神経症】
神経症は、心因を元とするいろいろな障害の総称名でそれにはパニック障害・ 強迫性障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)および各種恐怖症などがあげられます。
そのうち<パニック障害>は、急に息が苦しくなったり、動悸や発汗・めまい・手足の痺れなどが突然、それもごく短い時間のうちに起こるもので死への恐怖をも感じます。
また、うつ病と併発していることも多く、一度でもパニックを起こしたことがある人は日頃、常に不安を抱えながら過ごしているのが通常です。
治療としては、認知行動療法などの精神療法が行われます。
<強迫性障害>は、自身の行動や思考が一般に照らし合わせた場合、不合理であることを認識しているものの、強い強迫観念が繰り返し発生するため苦痛や不安を感じ、その強迫観念を振り払うため、1日に極端な回数、繰り返し手を洗うなど儀式的に何度も同じ行為に走るものであり、うつ病やその他の不安障害などを併発していることも多く、自殺に関しての注意は必要となります。
<心的外傷後ストレス障害>は、自分や他者が、凄まじい外傷や死におよぶような出来事に直面した場合、それが深い心の傷、すなわちトラウマ(心的外傷)となって、その体験が極度のストレスとなり、生活に支障をきたすものです。
主な症状は、無力感やひどい怯えなどでトラウマとなった状況が再体験されるような感覚を生じるフラッシュバックが起こり発汗や血圧上昇・震えなどを起こすこともあるのです。
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