『基礎医学』を知ろう!

身体の中のシーソーゲーム

私たち生命体が、自然界の中で生き、また生き残っていくためには変化し続ける周りの環境に順応するだけではなく、活動と休息を上手く使い分けなければなりません。

もし敵に出くわしたならば、戦う(闘争)か、逃げる(逃走)かを瞬時に選択し、迅速に行動しなければ殺されてしまいます。

また、闘争や逃走で傷ついた身体を修復する作業もそのあと必要となるでしょう。

そして、それら二つの「トウソウ」を同時に行うことは極めて非効率であるため、脳は生体に対し活動と休息とを分けて行わせているのです。

ふつう人は朝、目が覚めると活動を始めます。

そして日中、仕事や家事、またスポーツや勉強・趣味などに労力を費やし、その後はゆっくり休憩しリラックスするとともに、夜には睡眠をとり、疲れた身体と頭を休めます。

そのようにして私たちは日々、活動と休息を繰り返しながら、生命現象を営んでいるのです。

そしてそれには、自律神経である「交感神経」と「副交感神経」が深く関与しています。

ところで、あなたは小さいころ、仲の良い友達と公園でシーソーをして遊んだことがありますか?

二人が、それぞれ自分の体重で相手に働きかけ、上に行ったり下に行ったり、片方が高くなると、もう片方は低くなる。

お互い優位に立ったり劣勢になったりした感覚を感じながら … 、きっと誰にもブランコやすべり台・ジャングルジムとともに幼い頃のとても楽しかった思い出があると思います。

でも、シーソーは一人で遊ぶことは出来ません。

必ず対になる相手が必要なのです。

自律神経もそれと同じで「交感神経」と「副交感神経」の二人が、まるでシーソーのように交代々々に優位に立ち、仲良くバランスを取り合いながら私たちの身体の状態を調整してくれているのです。

人間は主に昼の明るいときに活動し夜暗くなると休息をとります。

「交感神経」は、戦いや逃走など激しく行動する際に働く神経ですから朝の目覚めとともにその優位性が増し、それと相反するように「副交感神経」が劣勢となります。

また、夕方になり日が暮れてくると今度は「副交感神経」が優位となり、「交感神経」が劣勢に転じます。

つまり活動が激しくなる昼には「交感神経」が活躍し、また休息や睡眠をとるため夜は「副交感神経」が活躍するというわけですね。

それでは、各々の神経が主にどのような働きをしているのか、その一部を探ってみましょう。

「交感神経」は覚醒を促します。

心拍数と呼吸数を増やして血管を収縮させ血圧を上げることにより身体の隅々にまで素早く酸素と栄養素が運ばれるように働きます。

また、瞳孔を拡げ相手がよく見えるようにするとともに、鼠径部・脇・手のひら・足の裏、および全身の汗腺に働きかけて身体運動をスムーズに行わせるように働くのです。

それに対し「副交感神経」は、正反対とも言える行動をとります。

呼吸数・心拍数を減らして血流を緩やかにし、食品の消化吸収を促進するとともに、昼間の激しい戦いで傷ついた部位の修復を進めるために意識を消失させ優しく眠りへといざなってくれるのです。

このように「交感神経」と「副交感神経」の両者は、基本的に拮抗作用(きっこうさよう)と呼ばれる全く逆の働きをすることによって一つの器官に対し二重支配をしており、その環境に適した身体状態を作り出しているのです。

そして、それもまた皇帝が自身の視床下部という部分で、その自律性を調整しているというわけです。

しかし、怒りや悲しみ・ショックなどといった強いストレスが脳に加わると皇帝は調子を崩してしまい不眠や頭痛・めまい・ふらつき・食欲不振等々、不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる様々な症状の出る状態、すなわち「自律神経失調症」が生じてしまうのです。

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