『基礎医学』を知ろう!

失われた蒼穹

さて、次にお話しする2つの省は、国内の環境維持を担う働きをするものです。

大気汚染を防ぐことを仕事とする「呼吸器系」。

そして国民の生活により生じるゴミを排泄する「泌尿器系」。

それでは、まずは呼吸のシステムに焦点を当ててみましょう。

鼻からノド(咽頭)を通り、声帯のある喉頭より気管・気管支、さらには肺へと続く道を「気道」といい、それを構成する各部を総称して「呼吸器系」と呼びます。

その中でも特に鼻腔は、重要な役割を果たしています。

では空気の通る順にそれぞれの器官の働きを見てまいりましょう。

鼻から入った空気は、そこに林立するたくさんの鼻毛でまず大きなゴミが取り除かれます。そして細かいホコリや花粉・ウイルスなどは、常に流れ続けている鼻汁で洗い流され、またその量が多い場合には、クシャミで外に排出されます。

寒い冬においては、冷たく乾燥した空気を直接そのまま肺に送ってしまうと炎症を起こしてしまいます。ですから、それを防ぐために鼻はまるでエアコンのように外から入ってきた空気に鼻汁で適度な湿度を与えるとともに、そこで待ち構える「キーゼルバッハ部位」と呼ばれる毛細血管の集まったトンネルで空気の温度を体温と同じくらいにまで上昇させ咽頭へと送るのです。

そして無菌となった空気は、喉頭・気管を経て、気管支の細い管を通り抜け、肺の中の肺胞に達し、そこで酸素と二酸化炭素のガス交換が行なわれます。

この一連の作業は「外呼吸」と呼ばれ、肋骨と肋骨の間にある筋肉(内肋間筋・外肋間筋)と横隔膜の運動がそれを担っています。

一般的に呼吸と言えばこの外呼吸のことであり、また外呼吸に対し細胞内で酸素を使ってエネルギーを生み出すための作業による呼吸は「内呼吸」と呼ばれ、その時に二酸化炭素が生じるのです。

しかし現代社会における車の排気ガスや工場排煙などは肺にとってまさにスモッグといったところでしょう。

我々は、発展というものと引き換えに大切な自然を、そして自らの健康をも喪失しつつあるのかも知れません。

蒼穹の下、できれば少しでも綺麗な空気を吸いたいものですね。

ちなみに横隔膜は、胸腔と腹腔の間にある筋板で腹式呼吸を担っています。

そして、時々起こる厄介な「しゃっくり」は、この横隔膜の痙攣によるものであり、また余談ですが、焼肉店で食べる「ハラミ」は、肉のように思いますが、実は牛の横隔膜の部分なのです。

骨格筋ではなく、内臓の一つに分類される筋組織で出来た横隔膜。

常に動き続けているからこそ、あんなに美味しいのですね。

独立国家『人体』において呼吸器系とともに国内の環境を守るのはオシッコを造る「泌尿器系」です。

そして、肛門から排泄される大便も一見すると体内で生じたゴミのように思いますが、既に消化器系で学んでいただいた通り、腸内は体外であるため、大便は『人体』という国の国民(細胞)が出した老廃物(ゴミ)ではありません。

少しややこしいですが、しっかり区別して覚えてくださいね。

では、『人体』の環境省とも言える廃棄物処理の現場に目を向けてみましょう。そしてまたそれは、素晴らしいリサイクル能力を持っているすごい器官でもあるのです。

生命活動により生じた体内の老廃物は、尿として体外に排泄されます。

尿を作るのは、腰の左右にある空豆の形をした2個の「腎臓」。

腎臓で作られた尿は「尿管」という管を通って「膀胱」に蓄められいっぱいになると「尿道」から体外へと棄てられます。

これが泌尿器系の働きですが、腎不全を起こし腎臓の機能が著しく低下すると一生、人工透析をして体内を浄化し続けなければ尿毒症を起こして死んでしまいます。

では、そんな大切なオシッコ作りを腎臓がどのようにして行なっているのかを見てまいりましょう。

一言で言えば腎臓は、血液の濾過装置です。

体内の細胞や組織で生じた老廃物は全て血液で運ばれ、腎臓の中にある「ネフロン」というフィルターで浄化されます。

このネフロン、なんと片方の腎臓に 約100万個もあって、驚くことに1日に 約150リットルもの原尿を作っているのです。

しかし、尿として実際に棄てられるのは尿素や尿酸、薬物などを含んだ一部だけで、その99%は有効なグルコースやアミノ酸などとともに再吸収され血管の中に戻されます。

また腎臓は、尿の生成以外にも「レニン」や「エリスロポエチン」というホルモンを分泌して血圧にも関与し、体液のpH調節を行うとともに、骨髄に作用して赤血球の新生を促進する働きもしています。

女性に多い膀胱炎は、尿道から入ったバイ菌が膀胱で炎症を引き起こすものですが、放っておくとバイ菌が尿管を登り、腎臓の入り口で腎盂炎となったり、また更に進んで腎炎になったりすることもありますので、常に清潔を保つとともに冷えや疲れを避けるようにしなければなりません。

女性に比べ、男性はどちらかと言えば尿道が長いため、膀胱炎より尿道炎になりやすい傾向があります。

普段から水分をたくさん摂ってオシッコをいっぱい出しましょう。

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