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アイデンティティの確立

皆さんは、誰か知らない相手に「君は何者だ?」と問われたとき、いったいどう答えますか?

多くの人は自分の名前を名乗り、また住所や職業・年齢などを答えるのではないでしょうか。

でも果たしてそれは、あなたという人間を本当に正しく表現し証明することが出来ていると思いますか?

確かに年齢は、あなたの肉体がこの世に生まれてからどれだけ時間が経過しているかを表しています。しかし名前・住所・職業などはあなたに付属する公的条件にしか過ぎず社会から見た場合、肉体は同じであっても改名したり、引っ越しや転職などをするとその段階で、あなたは別の人間になってしまいます。

では、自身を証明するにはどうすればよいのでしょうか?

それは、形而下(形あるもの)のあなたである肉体だけをみせるのではなく、形而上(形なきもの)のあなた、すなわち精神を相手に理解させることが大切なのです。

見た目ではなく、どんな考えや価値観を持った人間なのか、それが相手に伝わったとき初めてあなたが証明されるのです。

そればかりか、たとえあなたに会ったことがなくても、文通などで長きに渡り交際してきたならば相手には、あなたがどんな人間であるのかが、しっかり伝わっているはずです。

逆に通勤電車などで毎朝会っていても、一度も話したことがなければ相手がどのような人間なのか識る由もありません。

このように「精神」と「肉体」すなわち、心身が対になったものが人間というものなのです。

アメリカの心理学者エリクソンは、青年期における最も重要な発達課題としてアイデンティティ(自己同一性)を掲げました。

アイデンティティとは「自分は何者で、何をなすべきなのか」すなわち「私は、こういう考えや価値観を持った人間です」という他者に対する自己の意味を表す言葉なのです。つまり自分とは何なのかを示す唯一の方法は「自己の存在証明」であると言えるでしょう。

そして発達課題とは、人間が健全で幸福な日々を送るための、人生においてぶつかる壁のことなのです。

発達課題の壁は、乳幼児期に始まり人生の各段階において何度も現れます。つまりその壁を上手く乗り越えることが出来なければ精神の成長が歪んだものとなってしまい神経症や精神障害を引き起こす原因ともなってしまうのです。

アイデンティティの確立は自分の存在意味を見つけるための重大な課題であり、幾つもの発達課題を乗り越え、自分が自分として自身を生きたのち、最後に最も高い壁が目の前に立ちはだかります。

そして、それこそが人生最期の発達課題『死の受容』なのです。

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