『基礎医学』を知ろう!

川の流れのように

皇帝ブレインのもと、自律神経系とともに生体機能の状態を調節しているものに「内分泌」があります。

「内分泌」は、主に電気信号で素早く情報を伝える神経とは異なりまるで川の流れのようにそれぞれの内分泌腺より「ホルモン」という物質を血液に分泌し、血流に乗せてそのホルモンに対する受容体(レセプター)を持つ細胞(標的細胞)にゆっくりと長きにわたり作用を与え続けます。

腺とは、汗や涙など何かを分泌する組織のことであり、汗腺・涙腺・皮脂腺のように身体の外に分泌をする「外分泌腺」と情報伝達物質であるホルモンを体内に分泌する「内分泌腺」に分けられます。

そのうち、ホルモンを分泌する内分泌腺には、視床下部・下垂体・甲状腺・膵臓・卵巣・精巣などがあり、そこではそれぞれ特異的な作用を持つホルモンが作られているのです。

しかし、ホルモンはその量が多過ぎても少な過ぎても生体に障害を生じさせてしまいます。

では、ホルモンの分泌量や血中濃度はどのようにして調節されているのでしょう … 。

ホルモンには、部長・係長・平社員など、会社の役職のように段階的な階層があり、上位ホルモンから下位ホルモンへと階層的に支配がなされています。(例…視床下部→下垂体前葉→下位の内分泌腺)例えば、平社員があまり仕事をしない場合、その情報はたちまち上司たちに伝わり、部長は係長に、また係長は平社員に仕事をきちんとするように改めて指示をするのです。

これを「負のフィードバック」といい、上位ホルモンの分泌量、すなわち部下への指示は、下位ホルモンの濃度、つまり部下の仕事量が低くなれば増加し、高くなれば減少するといった具合に調整がなされているのです。

また他にホルモンは「サーカディアンリズム」(概日リズム)というおよそ24時間の日内リズムを持つとともに、自律神経の支配を受けているものもあります。

私たちが、この世に本当に小さな命として親から生(せい)を受け、成長していくことにもホルモンは大きく関わっています。

ここでは各々の内分泌腺がどんなホルモンを分泌し、それらがどのような働きや役割をしているのか、その主なものを見ていくことに致しましょう。

〈成長と発育〉
赤ちゃんとして生まれた私たちは「成長ホルモン」と言われる下垂体前葉から分泌されるホルモンにより発育期の成長が促進され、骨や筋肉が作られます。
そしてそれには甲状腺から分泌される「サイロキシン」も関与し代謝を促すとともに精神活動の調整もしています。

〈血糖値の調整〉
膵臓では、血糖値を低下させる「インシュリン」と、血糖値を上昇させる「グルカゴン」が産生され、その調節がなされています。糖尿病は、このインシュリンの分泌異常が生じることにより起こる病気で悪化すると失明や末梢神経障害による組織の壊死などを引き起こしてしまいます。

〈サーカディアンリズム〉
日常の生活においては松果体から分泌される「メラトニン」が概日リズムを形成し私たちの暮らしを見守ってくれています。

〈血圧とステロイド〉
腎臓から分泌される「エリスロポエチン」は、赤血球の新生を促進させ、同じく「レニン」は、血圧の調節に関与します。
また腎臓の上に位置する副腎から分泌される「アドレナリン」は、心臓や肝臓に作用し、心拍やグリコーゲンの分解に関与、「ステロイド」は、炎症やアレルギーの抑制に貢献します。

〈男らしく、女らしく〉
私たちは心身の成長に伴い生殖の能力を身につけていきますが男子においては精巣より分泌される「テストステロン」という男性ホルモンが声変わりや体毛の成長を促し、筋肉質な肉体を形成するとともに男性内生殖器を発育させ、精子を産生します。
また女子においては、卵巣より分泌される卵胞ホルモンである「エストロジェン」と、黄体ホルモンの「プロゲステロン」という二つの女性ホルモンが乳腺や乳房を発達させ、皮下脂肪のついた女性的な肉体を形成するとともに、排卵や妊娠の維持をおこないます。
そしてこのように成熟した個体へと成長した私たちは、互いに愛する相手を見つけ子孫を作り、はるかなる未来へとその生命を連綿と引き継いでいくのです。

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