心不全は「慢性心不全」と「急性心不全」に分けられますが、そのうち「慢性心不全」は何らかの心臓疾患により心臓の機能が徐々に低下し心臓の拡張などによっても代償できなくなった状態であり、「急性心不全」は心筋梗塞や心筋炎などによって心臓の機能が急激に低下した状態で、主に左心室の不全を起こすものなのです。
症状は、左心室の機能低下が起こる「左心不全」と、右心室の機能低下が起こる「右心不全」で異なり、左心不全では呼吸困難・咳・喘鳴・血圧低下などがみられますが、右心不全では足のむくみ・倦怠感・食欲低下などが現れます。そして心不全が長期化すると左右両方の心不全症状がみられるようになってきます。
私たちの身体には、酸素・二酸化炭素・栄養素・老廃物などを血液に乗せて運ぶ動脈・静脈という血管が全身に張り巡らされています。
また、それ以外にもリンパ液(組織液)がリンパ管内を巡行し、その途中には関所として免疫機構を担うリンパ節が各所に設けられています。
そして、それら血液やリンパ液を身体の隅々まで行き渡らせるために休まずポンプとして働き続けているのが心臓です。
最新の研究で鍼灸治療は、それら循環器に対し、様々な作用を示すことが分かってきました。
血液に対しては、赤血球・白血球・血小板を増加させるとともに、血管を拡張させて血流を改善し血圧を調整、出血に対しても血液凝固を促進し止血を促します。
神経系・免疫系・内分泌系に対しても生理学的に働きかけ、脈拍の正常化・抗体の増加・免疫活性・血液の抗酸化など、様々な作用を発動するのです。
それゆえ鍼灸治療は「心不全」の症状である浮腫や血圧低下などに対し、血流調整作用で症状を軽減するとともに、強心作用を用いて心機能を改善の方向へと向かわせてゆくのです。