流行性耳下腺炎は俗に「おたふく風邪」とも呼ばれ、ムンプスウイルスが飛沫感染により気道粘膜で増殖した後、血液中に入って主に耳下腺や顎下腺を炎症・腫脹させる感染症です。
症状は2~3週間の潜伏期間の後、頭痛や発熱、痛みをともなった耳下腺腫脹が出現します。また、ムンプスウイルスが血液を介して広がるため、全身のリンパ節や髄膜、生殖器、膵臓などで発病する場合もあります。
発熱は数日で軽快し、耳下腺腫脹は約1週間で消退するため一般的に予後は良好だが、合併症や不妊の原因ともなるため、早期の治療が必要です。
感染症は、ウイルスや細菌などにより引き起こされる疾患で、私たちは白血球を中心とした免疫機構により、それら病原体を攻撃・排除しています。
特にリンパ球に属するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、ウイルスや細菌をいち早く発見し、他の免疫系の指令を必要とすることなく単独で即座に病原体を殺傷します。NK細胞は別名「生まれながらの殺し屋」とも呼ばれ、他の免疫細胞の攻撃を免れた病原体をも攻撃するのです。
そしてその後、病原体を貪食した樹状細胞やマクロファージからの指令を受けたヘルパーT細胞やキラーT細胞などがNK細胞に追随する形で病原体を攻撃することとなります。
また好中球は細菌やカビなどを殺傷するとともに、リンパ球の一つであるB細胞はヘルパーT細胞の命令を受けて、その病原体(抗原)に対する抗体を産生し、その抗原の働きを止めてしまうのです。
最新の研究で鍼灸治療は、NK細胞・T細胞などのリンパ球を増加させ、それらの血液中への移行を促進する作用を示すとともに、その活性化を強く促すことが証明されています。
さらに、鍼灸治療はB細胞による抗体の産生能力を高めるだけでなく、ストレスなどによる免疫抑制に対する防止効果も有しているため、様々な感染症の治癒を可能とするのです。
それゆえ鍼灸治療は、おたふく風邪とも呼ばれる「流行性耳下腺炎」の症状である発熱・咳・鼻水・耳の下の腫れなどに対し、鍼灸治療の持つ消炎・抗炎症作用で症状を緩和するとともに、鎮痛作用により頭痛やノドの痛みを軽減するのです。