舌がんは、主に舌の側縁部に生じる悪性の腫瘍で、発赤や痛みなど炎症症状を伴わない小潰瘍として発症し、増大すると違和感を感じるとともに腫瘤となって出血したり、更に進行すると舌の運動障害や痛みもみられるようになります。
好発年齢は50~60代で男性に多く、その比率は男性が女性の約2倍で、口腔に生じるがんの中でも発生頻度が高く、その約半分を占めています。
原因は今のところ明らかではありませんが、舌の炎症や合わない義歯または歯並びの悪さなどによる舌への慢性的な刺激の他、喫煙やアルコール、刺激物なども深く関連するといわれています。
私たちの体内では、実は健康な人であっても毎日5,000個くらいの「がん細胞」が作られてしまっているのです。
これは細胞再生の際におけるDNAのコピーミスなどによるもので、それらのほとんどは免疫機構により日々排除されています。しかし加齢やストレスなどにより免疫力が弱くなると、それらの「がん細胞」は増殖を繰り返し様々な部位に「がん」を発生させてしまうのです。
「がん細胞」の排除を行う主な担い手はリンパ球を中心とする白血球で、特にリンパ球に属するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)は「がん細胞」をいち早く発見し、他の免疫系の指令を必要とすることなく単独で即座に「がん細胞」を殺傷します。NK細胞は別名「生まれながらの殺し屋」とも呼ばれ、他の免疫細胞の攻撃を免れた「がん細胞」をも攻撃するのです。
そして、その後「がん細胞」を貪食した樹状細胞やマクロファージからの指令を受けたヘルパーT細胞やキラーT細胞などがNK細胞に追随する形で「がん細胞」を攻撃することとなります。
最新の研究で鍼灸治療は、NK細胞・T細胞などのリンパ球を増加させ、それらの血液中への移行を促進する作用を示すとともに、その活性化を強く促すことが証明されています。
さらに、鍼灸治療はストレスなどによる免疫抑制に対する防止効果を有するため、免疫系を調節することにより「がん」の発生を抑止し、またその増殖を抑制することが可能となるのです。
それゆえ鍼灸治療は「舌がん」の症状である舌痛や舌縁部痛などの癌性疼痛に対し、鍼灸治療の持つ鎮痛作用により、がんの痛みを緩和するとともに、止血作用により潰瘍部や腫瘍部からの出血を軽減します。